再生医療は日本の国際的に競争力の高い科学技術分野であり、人類初のiPS細胞臨床応用の対象は網膜疾患であった。しかしながら最初のターゲットが網膜そのものではなく、その外側に位置する上皮細胞であったのはひとえに「神経回路」の再構築の難しさにある。現段階の再生医療技術では、個々の神経細胞の分化誘導は可能である。しかし、網膜本来の「機能」を再生するためには、組織としての機能、つまり、網膜神経回路における視覚情報伝達機構の理解が必要不可欠である。その為には、実験的観測による回路構造および動態の理解に加え、神経回路の計算論的モデルを構築し、機能再構築できる構成論的理解が必要になる。本プロジェクトでは、情報系・生物系・工学系・心理系研究者が集結した実験・理論の研究共同体制により、細胞・回路・認知機能の多階層に渡る機能解析研究を推進する。国内外の卓越した研究者や臨床医とも協力し合いながら、医療応用を目指した学際的モデル構築研究拠点を形成する。同時に、iPS細胞を用いた再生網膜組織を作製することにより、構築した神経回路計算モデルの視機能再構築への基盤技術を確立する。
